旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
8.きらめく星よりも
偽物の夫婦として毎日を過ごすたび、少しずつ、津ヶ谷さんを知っていく。
知れば知るほど、王子様でも王様でもない、繊細な優しさを持つ彼に、惹かれていく。
心の中を、彼の存在が埋め尽くしてしまう。
「明日、どこか出かけるか」
「へ?」
それは、展示会を終えた金曜日の朝のこと。
ふたりで朝食を食べていたところ、突然津ヶ谷さんが発した言葉に、私は箸でつまんだ焼き鮭のかけらをポロッとこぼした。
「い、今なんて……?」
「だから、明日どこか出かけるかって言ったんだ。お前、鮭こぼしてるぞ」
聞き返す私に、何度も言わせるなといった口調で再度繰り返されるその言葉に、私は再び耳を疑った。
あの津ヶ谷さんが、自ら私をデートに誘ってくれるなんて……!?
ハッとして辺りを見回すけれど、小西さんは洗濯機を回しに脱衣所の方へ行っており姿は見えない。
「どうしたんですか……今そんな話しても、小西さんいないからアピールになりませんよ?」
「別に、小西さんの目を気にしてとかじゃない」
そんな私の反応をかわいげないと言いたげに呆れた顔をする。
「たまには普通に遊びに行くのも悪くないだろ。なんだよ、行きたくないってことか?」
「えっ、行きます!行きたいです!」
大きく頷いた私に、津ヶ谷さんはふっと笑うと一足先に朝食を終えた。