旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
小西さんの目を気にしてとかじゃなくて、普通に遊びに行くために誘ってくれた……。
それってつまり、デートってこと?
いや、あくまでも私と津ヶ谷さんは仮の夫婦。そのために親密度を上げようという作戦のひとつなのかもしれない。
でも、そうだとしても嬉しい。
明日なに着ようかな、なんて一瞬で浮かれてしまう自分がいる。
でも、津ヶ谷さんがデートに誘ってくれるなんて意外だな。
少しずつだけど、彼との距離が近づいていると感じる。
それがこんなにも嬉しく思えてしまうのはどうしてだろう。
その日の午後、浮かれそうになる足取りをぐっと堪えて、私はひとりオフィスの廊下を歩く。
明日はなにを着ようかな。あ、以前津ヶ谷さんが買ってくれた靴を履いていこう。
そんなことを考えながら、休憩スペースの前を通り過ぎる。
「あー彼女ほしい」
「お前は高望みしすぎなんだよ。なぁ、津ヶ谷」
ところがそこから聞こえてきた『津ヶ谷』の名前に、思わず足を止めて引き返し、ドアが開いたままの室内をこっそりとのぞく。
小さな休憩スペースの中には、津ヶ谷さんを始めとした男性社員が4名ほど、コーヒーを片手に話し込んでいた。
にこにこと王子の顔で笑う津ヶ谷さんに、先輩たちはそれを偽りのものだと疑うことなく盛り上がっている。