旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



「高望みなんてしてねーよ!俺はスラッとしてて美人系で落ち着いてて……桐島みたいなタイプが好きなだけだ!」

「お前じゃ桐島にはつりあわないだろ」



あはは、と男性たちは盛り上がるけれど、一方で私はどんな顔をすればいいかわからないでいる。



「そう言っても、桐島いいじゃん。な、津ヶ谷もそう思うよな?」

「あぁ、かわいい人だよね。桐島さん」



津ヶ谷さん、笑顔で言ってるけど『かわいい』なんて絶対思ってないな……。

どこか冷めた気持ちでその話を聞きながら、もう行こう、と歩き出そうとする。



「そういえば津ヶ谷の好みのタイプってどんな感じ?」



けれど、その言葉に再び足は止まってしまう。

津ヶ谷さんのタイプ……聞きたいかも。そんな思いから耳を傾ける。



「そうだな……好みっていうか、好きになった人が好みのタイプかな」



こういう人、と断言しないあたりが彼らしい。

「あ、あと」と小声でなにかを付け足すけれど、聞こえない。

『あと』、なんだろう。気になるけれど前から歩いてきた社員と目が合い、立ち聞きしていたことがバレないように微笑みその場を歩き出した。



けど、好きになった人がタイプ、ということはつまり、乾さんのような人が好みということ?

はっきりとしていて、隠すことなく物を言う人。

私とは、真逆な人。そう思うと胸がチクリと痛んだ。



そうだよね。私は偽装のための妻役。

好きじゃなくても、好みですらなくても、抱きしめる。

デートにだって誘うし、大切に見えるように扱ってくれる。



気持ちなんて、そこになくても。




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