旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



翌日。よく晴れた土曜日の朝、私と津ヶ谷さんはふたり、彼の車で都内を走っていた。

窓の外の爽やかな青空の一方で、私の表情はズーンと沈んだままだけれど。



「おい、なんだよそのテンション」

「……なんでもないです。ほっといてください」



さすがになにかあったのかとたずねる津ヶ谷さんに、私はふんと拗ねたように顔を背ける。



いや、津ヶ谷さんはなにも悪くないんだけどさ……。

だけど昨日のあの話を聞いて以来、本当は津ヶ谷さんは乾さんを選びたかったんじゃないのかなとか思ってしまう。



私は都合がいいから選ばれただけ。そう思うたび、胸が締め付けられて苦しい。

その時、赤信号で車が止まる。津ヶ谷さんがなにげなく私の足元に目を向けた。



「お。今日この前買った靴履いてるんだな」



その視線の先には、白いスカートに合わせたラベンダーカラーのフラットパンプス。

まだ傷ひとつないそれは、迷った末にやはり履くことにした靴だ。



「似合ってるんだから普段から履けばいいのに」

「会社ではヒールって決めてるんです。……それに、もったいなくて、履けなくて」



自分で言って照れてしまい、それを隠すように無愛想な言い方になってしまう。

そんな私を見て、津ヶ谷さんは「ははっ」と笑う。



「もったいないって。子供かよ」



おかしそうに口を大きく開けて笑う。その表情にどちらが子供だかと思いながらも、かわいらしくて胸がときめく。



先ほどまでの拗ねたような気持ちも、こんなやりとりひとつで直ってしまうなんて。

単純な性格な自分がおかしくて、笑みがこぼれた。



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