旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「ここなら知ってる人と会うこともないだろうし、思い切りはしゃげるだろ」
津ヶ谷さんはそう言いながら、私に向けてメニューを広げた。
「ありがとう、ございます」
その思いが嬉しくて、えへへと笑うと、彼はますます恥ずかしそうに視線を外す。
「じゃあ私、『涼宮くんのラブマジックキュンキュンソーダ』で」
「よく恥ずかしげもなくそのメニューを口に出せるな」
大好きなキャラクターたちのコラボレーションのメニューや、グッズに囲まれて過ごせて、嬉しい。
だけどそれ以上に、私を思ってくれた津ヶ谷さんの気持ちが嬉しい。
運ばれてきたソーダをふたり飲みながら、私は来場特典のポスターをまじまじと見る。
「でもまさか来られるとは思ってなかったので、嬉しいです。都内じゃ誰に見られるかわからないし、そもそもひとりで行くの寂しくて」
「お前、趣味関係の友達とかいないのか?」
「ネット上にはいますよ。けど顔を合わせると結局外面作って打ち解けられなくなっちゃうから、会うことはしてないんです」
笑って答えた私に、津ヶ谷さんはグラスに口をつけて飲んだ。
キュンキュンソーダがまるでオシャレなお酒のように見える……。
「あっ、でも地元には学生時代から仲良い子がいて、その子は私の趣味も大学デビューも知ってるんです」
「へぇ。そういえばお前地元新潟って言ってたな」
「はい。ちょっと田舎で不便ですけどいいところですよ。実家の周りは田んぼと畑しかなくて、電車やバスも一時間一本で。でも景色はとってもきれいで……」
地元ののどかな景色を思い出しながら話す私に、津ヶ谷さんは小さく笑って話を聞く。
って、私ひとりで喋りすぎかも。