旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「すみません。ひとりでペラペラと」
はっとして話すのをやめると、彼は首を横に振る。
「いや?思えば彩和の地元の話とか聞いたことなかったからな。もっと、いろいろ聞かせてほしい」
彼の言葉に、胸がドキ、と音を立てた。
優しい目でそんなふうに言われたら、また浮かれてしまう。
彼が、私を知りたいと思ってくれる。
聞かせてほしいと言ってくれる。
それがとても嬉しくて、私はアニメのこともそっちのけで地元の思い出を語った。
カフェを出ると、私たちはショッピングモール内を歩いた。
建物の中はセールの呼び込みをする店員の声やBGM、たくさんの客の声で大にぎわいだ。
「あー、楽しかった!グッズもたくさん買っちゃいました」
「それがまたあの部屋に祀られるかと思うと……」
「ちょっと、祀るって言い方やめてくださいよ」
手もとの袋いっぱいのグッズを手に、口を尖らせ反論すると、津ヶ谷さんはなにかに気づいたかのように前方へ視線をとめる。
「あ、彩和」
そして、私の肩をぐいっと引っ張り抱き寄せた。
突然のことに「えっ」とつい声が漏れると、正面から小走りで来た人が私のすぐ横を駆け抜けていった。
ぶつからないように、避けさせてくれたんだ。
それ以上の意図はないとわかっていても、肩に触れる大きな手につい胸はときめいてしまう。