旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「あの、どうして私を偽装夫婦の相手に選んだんですか?」
ぼそ、とつぶやくようにたずねた私に、津ヶ谷さんは不思議そうにこちらに目を向けた。
「どうしたんだ、いきなり」
「えっ、いや、なんとなく。気になって」
確かにちょっと唐突だったかも。
浮かんだ疑問を率直に言葉に表した自分に、もっと自然に会話を運べなかったのかと後悔した。
けれど、津ヶ谷さんは少し考えてすんなりと答えてくれた。
「そりゃあ、脅すネタもあってちょうどよかったから」
って、そうですよね……。
都合がよかったから、それ以上の理由などないとわかっていてもはっきり言われて乾いた笑みがこぼれた。
「それに、なんとなく気づいてた」
「えっ、私がオタクだってことにですか!?」
「そっちじゃなくて。外面のほうだ」
え?
普段の私が外面だってことに、気がついていた?
なんとなくでも、まさか気づかれていたとは思わず、驚きを隠せない。
「笑顔で柔らかく話すけど周りと距離保って、踏み込ませない。時折垣間見えるどこか寂しい表情が、自分の寂しさと似てると思った」
似て、いる。
誰にも本当の自分を見せられない寂しさや、とりあえず貼り付けた笑顔が。
確かに一見似ているかもしれない。だけど、きっと私と彼は違う。
「……似て、ないです」
小さな声で否定すると、津ヶ谷さんは意味を問うようにこちらを見た。