旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「津ヶ谷さんは、お母さんを始め周りの期待を裏切らないために王子でいる。けど私は……本当の自分を見せて嫌われたくないだけ」
幼い頃はご両親の、今は会社の人々の期待に応えるために本当の自分を隠す彼。
その一方で、嫌われたくない、否定されたくない気持ちだけで本当の自分を隠す私。
そんな私と津ヶ谷さんは、似ているようで真逆だ。
「自分のことしか考えてない、かっこ悪い私と津ヶ谷さんは似ても似つかないです」
つぶやいた私に津ヶ谷さんは、そっと頬に触れる。
不意に触れられ彼を見ると、その目はこちらを真っ直ぐ見つめていた。
「かっこ悪くなんてないだろ」
「え……?」
「自分を守るためでも、そうありたいと描いた姿に近づこうと努力する彩和は、かっこいいよ」
かっこ悪くなんて、ない。
こんな私のことも、こうしてまた認めてくれる。受け入れ、向き合ってくれる。
そのたったひと言で心にはあたたかさがこみ上げた。
「ありがとうございます……」
嬉しさを隠すことなく微笑むと、津ヶ谷さんもそっと笑った。
そんな私たちに、うっすらと点っていた明かりは落とされ、少しして上映が始まった。
近い距離に、彼と肩が触れる。その度胸がまた音を立てる。
天井に広がる輝く星を見つめながら気づいた。
私、好きなんだ。津ヶ谷さんの、こと。
同じように外面を繕う苦労を知っているから?
ううん、違う。
きっと、そうじゃなくても好きになってた。
不器用だけど優しい、彼のこと。
自覚すると一層ドキドキして、プラネタリウムの内容が頭に入らない。
星のきらめきと彼への愛しさ。それだけが、この胸に焼きつく。