旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです




「彩和?」



名前を呼ぶ津ヶ谷さんの声に、ふと我に返る。

時計は夜10時を指しており、つけっぱなしのテレビのにぎやかな音が響いていた。



今日一日、ほとんどボーッとしてた……。

いつのまにか仕事を終えて帰宅して、夕飯まで終えていたらしい。けれどいまいちはっきりと記憶がない。



見ると、ちょうど帰ってきたところらしい津ヶ谷さんはネクタイを緩めながら辺りを見回す。



「小西は?」

「え?あっ、そういえばさっき帰るって言ってた気が……」

「『気が』ってなんだよ。またボーッとして、どうした?どこか悪いのか?」



朝のこともあってか、しきりに体調を気にかけてくれる津ヶ谷さんは、私の額に触れようとそっと手を伸ばす。

けれど私はそれをかわすと、立ち上がり台所へと駆けた。



「すみません、なんでもないです。大丈夫ですから」

「それならいいけど」

「ごはん温めちゃいますね」



台所に用意された、津ヶ谷さんの分の食事であるラップがかけられた器を手に取り、レンジへと入れる。

そんな私を横目で見ながら、彼はスマートフォンをテーブルに置いて部屋に向かう。



ほどなくしてピーと音を立てたレンジからテーブルへおかずを運ぶと、そこに置かれたままのスマートフォンがヴーと音を立てた。

つい目を向けると、そこには【新着メッセージ】の文字。

それと【乾しのぶ:明日の待ち合わせだけど……】と送信者である乾さんの名前と、本文が見えてしまった。



乾さんからの、メッセージ……。

明日の待ち合わせということは、明日乾さんと会うということ?


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