旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「コラ。なに人のスマホまじまじと見てんだよ」
それをついまじまじと見ていると、いつの間にか戻っていたらしい津ヶ谷さんに頭をコツンと小突かれた。
「すみません。鳴ったからなにかと思って……ちょっと見えちゃって」
「ま、別にやましいこともないからいいけど」
勝手に覗き見ていた私を咎めることもなく、部屋着であるTシャツに着替えた津ヶ谷さんは自分の席に腰を下ろした。
気になるのは、やはり先ほどの乾さんからのメッセージについてだ。
「明日、乾さんと会うんですか?」
「あぁ。なんか話があるっていうから」
本当に特にやましいことなどないのだろう、彼は平然と頷く。
やっぱり。乾さんと……。
ということは、乾さんは明日津ヶ谷さんに気持ちを伝えるのかな。
やり直したいって、向き合いたいって、彼女からそう言われたら津ヶ谷さんはどうするのだろう。
頷いてしまうのかな。
私との関係なんて終わらせてしまうのかな。
……でも、もしかしたら。
不安の一方で、断ってこちらを向いてくれるかもしれない。
そんな私に都合のいい結果が待っているかも、なんて一抹の期待が浮かんだ。
だって、仮の妻だとしてもふたりで過ごした時間は嘘じゃないから。
彼の優しさは本物だと信じたいから。
意を決して、息をひとつ吸い込んで声を発する。
「……聞いても、いいですか」
津ヶ谷さんの隣に膝をついて、言う。
それまでと違う私の真剣な声色から、津ヶ谷さんは不思議そうに私に目を向けた。
「もし私が津ヶ谷さんと本当の夫婦になりたいって言ったら、どうしますか?」