旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
10.懇願
不器用で優しい彼が好き。
王子の顔も、王様の顔も、全てひっくるめて愛しいと思う。
いつのまにかこんなにも惹かれていたのに、本物にはなれなかったから。
夢から醒めて、忘れるしかないってわかっているのに。
忘れ、られない。
ふと目を覚ますと、目の前には白い天井が広がっていた。
ここは私が元々住んでいたマンションだ。
津ヶ谷さんの家に行く際に荷物は全部移動したけれど、契約期間自体は残っていたからと津ヶ谷さんが別荘としてそのまま残してくれていたのだ。
あれから一週間。津ヶ谷さんの家を出た私は、このマンションに戻ってきた。
部屋の荷物は全ては運び終えていないけれど、服やタオルなど必要なものだけは持ってきた。
布団や生活用品は買い直し、ここでの生活を再スタートさせたのだ。
自分の家だったはずなのに、なんだか落ち着かないな。
ひとりきりの家も、小西さんのごはんがないのも、少しさみしい。
……小西さん、驚いてたな。
あの日、私は帰宅後小西さんに謝り全てを話した。
『ごめんなさい、私ずっと嘘ついてました』
津ヶ谷さんとは偽装結婚だったこと。
もうその必要がないから出ていくということ。
それらを謝りながら正直に話した私に、小西さんはただただ驚きながらも頭を上げさせた。