旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



「本音を隠して誰にも心を開かない子だったから、そんなあの子を理解してくれる存在がいれば違うだろうと思って、結婚を急かしたの」

「そう、だったんですか……」

「まぁ、その結果付き合ってもない子を結婚相手に仕立てるような息子だとは思わなかったけどね」



そう言って、呆れたように笑う。

そっか。津ヶ谷さんのお母さんが彼に結婚を急かしたのはそういうことだったんだ。



津ヶ谷さんのお母さんは、本当の彼の姿を知らなくとも、自分に見せる顔が本物じゃないことだけはわかっているのだろう。

どこか溝があるふたりにも、本当はお互い近づきたいという思いがあるのかもしれない、と思った。



「離婚だろうとなんだろうと勝手にすればいいわ。でもひとつだけ言わせて」



その言葉とともに、津ヶ谷さんのお母さんはまっすぐにこちらを見つめた。



「あなたや愁がどう思うかはわからないけど、お互いの長所を認め合うあなたたちは私には本物の夫婦に見えたわ」



本物の、夫婦に……。



『意外に思うところもたくさんありますけど……でも私は、愁さんだから惹かれたんです』



あの時私が、率直に述べた思いを“本物の夫婦”として見てくれる。

そのことが、とても嬉しいと思うほど、胸を苦しくさせた。





< 152 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop