旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
それだけの短い会話を終え、津ヶ谷さんのお母さんは、まだ仕事があるからと足早にその場を後にした。
それから私は複雑な気持ちを抱えたまま外回りを終え、お昼すぎに会社へ戻った。
オフィスに戻った途端に部長はすぐ私を見つけ、声をかける。
「桐島、今日の飲み会大丈夫だよな?」
「あ、あの私やっぱり今日……」
「普段はない総務部との合同飲み会だからなぁ!いやぁ、楽しみだ!な!」
聞いておいてこちらの答えに聞く耳など持っていない。
適当な言い訳で断ろうとしたものの、部長の豪快な笑い声でかき消されてしまった。
……まぁ、いいか。
少し出てすぐ出てしまおう。
その夜、日本橋にある居酒屋には広間を貸し切っての飲み会が行われた。
昼間部長が言っていた通り、今日の飲み会は営業部と総務部の合同飲み会で、同じ部署の人から普段あまり面識のない人までが揃っている。
端っこでひっそり飲んですぐ帰ろう。
そんな私の思惑とは裏腹に、着くなり長テーブルの真ん中に座らされ、隣には総務部の男性社員が座った。
「桐島、彼はうちの常務の息子でなぁ。仕事もよくできるし見た目もこの通りの爽やかな好青年!どうだ?いいだろう?」
「は、はぁ……」
「せっかくだし親睦を深めてみてはどうかね。うん、お似合いだ!美男美女だ!」
やけに彼を勧める部長に、そういうことかとその意図を察した。