旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「悪趣味ってなんですか!全部涼宮くんの公式グッズですよ!このポスターなんてサイン入りのレア物でその為に前日夜から並んで……」
「あーいい!聞きたくない!」
本性がバレてしまっているという安心感からか、涼宮くんの話となった途端についスイッチが入ってしまい語り出そうとした私に、津ヶ谷さんは耳を塞いで嫌そうな顔をした。
「さっさと顔洗って居間に来い。小西さんが飯の支度して待ってる」
そしてそれだけを言うと、スタスタと部屋をあとにした。
聞きたくないって……自分から涼宮くんの話題をふってきたくせに。
ベッドからおりると、私は棚の上のグッズを改めて綺麗に飾り直し、顔を洗いに洗面所へと向かった。
数日前、私は津ヶ谷さんと結婚した。
金曜の夜、言われるがままに婚姻届を書かされ土曜の朝に提出。
そのまま私の自宅へ向かうと、そこではすでに引越し業者が部屋の荷物をまとめており、瞬く間に津ヶ谷さんの家へと運ばれて行ったのだった。
まさかの怒涛の展開に昨日1日は呆然とするばかりで、全く受け入れられなかったけど……やっぱり、夢ではないんだよね。
聞けば、小西さんはこの家の家政婦として働きながらも津ヶ谷さんのご両親ともよく連絡を取り合っているのだそう。
つまり、家の中でも夫婦らしさを演じなければ、見破られてしまう。
そうなれば私の本性を彼によってバラされて、私はおしまいだ。
私には、なんとしてでもこの偽装結婚を貫かなければいけない、という以外選択肢はない。
ここ数日のことを振り返りながら洗面所でバシャバシャと水で顔を洗うと、やっとしっかり目が冴えてきた。