旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



「はぁ……」



顔を洗いメイクもして、着替えとヘアセットを終えた私は、先ほどまでの寝間着姿から一転し会社用の姿となった。

その姿で、自室として与えられた2階の角部屋から1階におり、居間へ向かう。



縁側があり、床の間には綺麗に生けた花が飾られたその部屋では、すでに津ヶ谷さんが横長いテーブルに着き食事を始めていた。

ごはんとお味噌汁、焼き鮭とおひたしが並べられたバランスのよい朝食だ。

私の分のおかずが津ヶ谷さんの目の前に用意されており、私はその席に着いた。



「……お前、内面より見た目の方が詐欺だろ」

「ちょっと。うるさいですよ」



悪かったですね、スッピンと顔が違くて!

こちらを見ることなく呟く彼に、キッと睨んで反論する。


すると、小西さんがお茶碗とお椀をお盆に乗せ台所からこちらへやってきた。



「彩和さん、おはようございます」



にっこりと笑って声をかけてくれる小西さんに、私も笑顔で返す。



「おはようございます。こんな早くから朝ごはんの準備してくださってありがとうございます」

「そんなそんな、滅相もございません。家事は全て小西の仕事ですから!愁さんも彩和さんも、家のことはお気になさらずに!」



小西さんは誇らしげに言いながら、私の前にお茶碗とお椀を置く。



そう。この家の家政婦の小西さんは、これからも、これまで通りこの家で家事をおこなってくれるのだそう。

家賃もタダ、家事もやってくれてこうしてご飯も出てくる……そう思うとこの結婚もなかなか悪くないかも。

って、そんなわけない!つられるな、自分!

心の中で強く言い聞かせながら、「いただきます」と食事を始めた。


< 31 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop