旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
あれは王子というより王様ですけどね……。しかも、無駄に偉そうで上から目線の横暴な王様。
あの本性を知れば、今キャーキャーと騒いでいる彼女だちも一斉に引いてしまうだろう。
元々そういう人だったらともかく、普段の王子姿からのギャップが余計怖い。
仮面なんてつけなければよかったのに。
……なんて、心の中で呟いた言葉はブーメランになって自分にも刺さった。
「桐島さん?ボーッとしてどうした?」
「え?あっ、すみません、なんでもないです」
そんなことを考えていると、上司に声をかけられハッとした。
いけないいけない、ここではしっかりしなくては。
結婚してまで守りたい、完璧な女の仮面をきちんとかぶるように、私はにこりと微笑みをみせる。
「あ、桐島さん悪いんだけどこの資料作成頼んでもいいか?今日中に」
「え?あ……」
上司から渡された書類を見てどのような資料を作るのかと確認すると、それは明日の会議に使用するもの。
なんで前日に言うんだとか、お互い仕事量はあまり変わらないんだから自分でやってよとか、正直なところいろいろ思う。
けど、断ったり嫌な顔をすることは、完璧を演じる上で自分が許せない。
「……はい、もちろん」
「さすが桐島さん。助かるよ」
不満は微塵もこぼさず見せず、笑顔で頷くと、彼は肩を叩いて去って行った。
そう、私がやればいいだけの話だ。
快く受け入れるだけで、完璧な女としての姿は守れる。
完璧な私は、断らないし、多少の無理をしてでもこなしてみせる。
そう自分に言い聞かせて。