旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「そうだよな、さすがに無理なこともあるよな」
「ごめんなさい、桐島さん!今度なにかあった時は私手伝うんで言ってください!」
完璧じゃない私へかけられた言葉たち。
だけどそれは失望だとか呆れだとか、自分が恐れていたものとは違う。
気遣いの、優しい言葉たち。
頑なに、貫きすぎていたのかもしれない。
気づけなかっただけで、実は、本当の自分の一部も受け入れてもらえるのかもしれない。
そう思うと、胸には安心感がこみ上げる。
「……わざわざ言わないで、自分ひとりの成果にしとけばよかったのに」
仕事に取りかかり始める皆に紛れて、隣に立った津ヶ谷さんは小声で言った。
「少しだけ、本当の自分に近づこうと思って」
そう思わせてくれたのは、津ヶ谷さんの言葉があったから。
「ありがとうございました、津ヶ谷さん」
自然とこぼれた笑みに、津ヶ谷さんはまた少しだけ驚いて、照れ臭そうに顔を背けて仕事に取りかかり始めた。
素直じゃない人。
だけど本当はきっと、いいところもあるのかもしれない。
そう思うと、これからの毎日が少しだけ楽しみに思えた。