旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「なんだ、駅まで一緒に通勤したかったか?」
「そんなわけないじゃないですか。どうぞお先にいってらっしゃいませ」
ふんと顔を背けながら嫌味っぽく言う私に、津ヶ谷さんはふっと笑って手を伸ばす。
突然頬に触れる指先に、つい胸はドキ、と音を立てた。
けれど次の瞬間には、右手で私の両頬を挟み、タコのような間抜けな顔にさせた。
「……なにするんですか」
「いや、会社では見られない『桐島さんのまぬけ面』を見てから行こうと思ってな」
「もう!人の顔で遊ばないでください!」
どこまで人を馬鹿にするの!
その手を振り払う私に、津ヶ谷さんはけらけらと笑いながら玄関のほうへと向かって行った。
もう、そうやって私をバカにして……!
この前は優しいと思ったのに。
あの優しさは気まぐれ?
それとも、王様姿に慣れたところで少し優しくされたから私が勘違いしてしまっただけ?
よくわからない人。
そう思いながら居間に入り、台所のほうにいる小西さんに「おはようございます」と声をかけてごはんを食べ始める。
すると、台所からこちらへ来た小西さんは、なにかを怪しむようにこちらをじっと見た。
「……ない」
「はい?」
「おふたりには、夫婦感がない!!!」
夫婦感?
なにをいきなり?
突然の発言に意味が分からず、ごはんを食べながら首を傾げる。
そんな私に小西さんは力説するように強くいう。