旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



だけど夫婦らしさと言われても、それってどういうものなのかがよくわからない。



そもそも私、まともに彼氏がいたことすらもほんのいっときしかないもんなぁ。

元彼とは半年付き合ったけど、経験もキス止まりだし。

彼を思い出すと、同時に嫌な記憶も一緒に出てきてしまう。



『そういうの好きとか、引くんだけど』



数年経った今でもこの胸にチクリと刺さるその言葉に、思い出したくない、とそれ以上考えることをやめた。





「桐島、これも頼むよ」



出勤してきたオフィスで、そんなことを考えながら資料のコピーをとっていると、思考を打ち切るかのように、突然隣の商品部の部長に声をかけられた。



「あっ、はい。かしこまりました」



ふと我に返り書類を受け取る私に、部長は隣に立つ。



「それにしても、桐島は今日も美人だなぁ」

「ふふ、ありがとうございます。おだててもなにも出ませんよ」



用件を終えたなら早く自分のオフィスに戻ればいいのに。そう言いたいのを飲み込んで、にこりと微笑み軽く流す。



「そういえば聞いたか?うちの課の志村、結婚するらしいぞ」

「そうなんですか。おめでとうございます」

「お前も美人だからって余裕こいてないで、そろそろ相手見つけないといき遅れるぞ。それとも、まだまだ遊び足りないか?」



そうニヤニヤといやな笑みを見せながら、部長は私の腰に手を回した。


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