旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「夫婦らしさ、ねぇ。わざわざ調べて実践しようってか?ずいぶん勉強熱心だな」
「違います!今朝小西さんが私たちのこと怪しんでたから……」
必死に跳ねてスマートフォンを取り戻そうとするけれど、津ヶ谷さんはそれを軽くかわしながら言う。
「そんなの小西さんの前でキスのひとつふたつでもしておけば誤魔化せるだろ」
「それができないから困ってるんです!」
「はぁ?なに言ってんだよ。減るもんじゃないし別にいいだろ。彩和だってそれくらい……」
き、キスのひとつふたつ?
私と津ヶ谷さんが?小西さんの前で?
想像しただけで恥ずかしくて、かああと頬が熱くなる。そんな私の反応を見て、津ヶ谷さんは驚いたように固まった。
「……まさか、お前」
「きっキスくらいならありますよ!数える程度は!!」
「数える程度って」
顔を真っ赤にして言う私に、こちらの経験値を察したように頷く。
「じゃあ、キスの練習から始めるか?」
「え?」
すると、津ヶ谷さんは手を伸ばし続けていた私にスマートフォンを返した。かと思えばその瞬間、腰を抱き寄せ顔を近づける。
え?
れ、練習って、つまり……その。
じっとこちらを見つめるその茶色い瞳に、心臓がバクバクと音を立てる。
そして意を決したようにぎゅっと目をつぶった、その時。
唇は触れず、代わりに鼻をぎゅっとつままれる感触に目を開けた。