旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「なーんてな」
「へ??」
津ヶ谷さんは、バカにするように鼻で笑いながら言うと、体を離す。
「か、からかいましたね!?」
「恨むなら、からかわれる自分の経験の乏しさを恨むんだな」
うっ。反論できないのが悔しい。
「それとも、本当にしてほしかった?」
なっ……!!
悔しさを声に出せず飲み込む私を見て、津ヶ谷さんはいっそうおかしそうに笑うと私が座っていたところの隣に座りお弁当を開いた。
本当性格悪い!!
腹が立ち、私はフンッと顔を背けると座り直して食事を再開させた。
……悔しい、けど。本当に、されるかと思った。
一度だけ感じたことのある彼の唇を思い出して、ときめいた自分が憎い。
その日の夜。
きっちり定時に仕事を終え、津ヶ谷家へ帰宅すると、お味噌汁のいい香りと小西さんの笑顔が出迎えた。
「小西さん。ただいま」
「おかえりなさいませ、彩和さん。今ごはんできましたから。先に食べてしまいましょう」
「じゃあ着替えてきちゃいますね」
小西さんと軽い会話を終え、自室へ向かうとルームウェアへ着替える。
ひとり暮らしの時ほどだらしない格好はさすがにできないけれど、家でくらいはゆったりした格好をしたい。
同じ女性同士小西さんも理解があるのか、すっぴんを見てもメガネ姿を見ても、小西さんはなにも突っ込んではこないし。
コンタクトを外しメガネをかけると、私は小西さんが待つ居間へと戻った。
横長いテーブルの端。すっかり自分の定位置になったところへ座ると、小西さんはそこへごはんをよそったお茶碗を置く。