旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



「あれ、津ヶ谷さんは?」

「特にご連絡もないのでそのうち帰られるとは思いますが……待ってるのもお料理が冷めてしまいますし」



そう言って小西さんが目の前に並べてくれる食事は、どれも作りたてでほかほかとした湯気が出ている。



「いつもはふたり分作っても私ひとりでいただいて、愁さんの分は取っておいて先に帰る生活でしたから。こうして一緒にごはんを食べられる相手がいて嬉しいです」



小西さんの勤務時間は、朝6時から夜8時まで。最低限の家事を行い、手が空けば自由に休憩、という条件なのだと以前聞いた。

時には津ヶ谷さんの帰りを待つことなく帰ってしまうこともあるのだろう。



せっかくの凝った手料理も、相手の反応も見られない、感想も聞けない、では寂しいものがある。

そのためか、こうしてふたりで食事をする時も小西さんは嬉しそうだ。



「小西さんのごはん、すごく美味しいです。本当に」

「あらあら、嬉しいですねぇ。小西でよろしければ、時短料理から愁さんの好物までなんでも教えて差し上げます!」



料理……。

その言葉に、ふと思い出すのは昼休みに調べた『夫婦らしさ』のある行動のひとつ。



「……あの、小西さん。ご相談が」



それについて相談をしようと話を切り出したところ、玄関の方からはガラッと戸が開く音がした。



「あ、愁さんが帰ってらっしゃいましたね」



その音に呼ばれるように席を立つ小西さんに、自分ひとり座っているのもどうかと思い玄関までついていく。

するとそこには、頭や肩を濡らした津ヶ谷さんの姿があった。


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