旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「おかえりなさいませ、愁さん……ってあら!濡れてる!」
「少しだけね。今そこで降り出してきたんだ」
そういえば、今日は夜から雨の予報だったっけ。
津ヶ谷さんの言葉に耳を澄ませば、戸の外からは小さな雨の音が聞こえた。
「はっ!二階の窓開けっ放しかもしれません!!小西が閉めてまいりますので、彩和さんは愁さんにタオルを!」
「あっ、はい」
思い出し、大急ぎで二階へ向かう小西さんに、私は言われるがまま脱衣所へ向かい、棚からタオルを取り出した。
そしてそれを持って玄関へ戻ると、津ヶ谷さんに手渡した。
「はい、タオルどうぞ」
「悪いな」
津ヶ谷さんはタオルを受け取る代わりに、スーツのジャケットを脱ぎ私に手渡す。
そして頭にタオルをかぶると、わしわしと濡れたその髪を拭いた。
「体冷えてませんか?ごはんの前にお風呂入ります?」
「あぁ、そうするかな」
伏し目がちに頷く彼は、なんとも色っぽい。これが水も滴るいい男、というやつだろうか。
ついじっと見つめていると、視線に気づいたように彼もこちらを見る。
見ていたことを知られたらどうせまたからかわれる。その思いから、パッと目を逸らす。
「彩和」
「はい?」
けれど突然名前を呼ばれて、津ヶ谷さんのほうを見た。
すると彼はタオルを被ったまま、私の腕を引っ張り顔を近づける。そして私の唇ギリギリの、頬にちゅ、とキスをした。
昼間より近づいた茶色い瞳と、ふわりと漂う同じ柔軟剤の香り。
頬に感じた薄い唇の感触。
それらに彼との距離の近さを感じて、心臓がドキッと跳ねた。