旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



「お前、本当慣れてないのな。耳まで真っ赤」

「悪かったですね……」



頬も耳も熱くてしょうがない。そんな私の横で、顔色ひとつ変えない津ヶ谷さんは、きっと、いや確実に慣れているのだろう。

自分が情けない。そう思うと同時に、平気で異性に近づき触れられる彼に胸が小さく痛んだ気がした。



って、なんでよ。

津ヶ谷さんくらいモテる人なら、異性に触れることくらいなんてことないって、わかっているのに。



「なんだよ、変な顔して」

「別に。なんでもないです」



自分でも気づかないうちにむくれた顔になっていたのだろう。

私の表情に、津ヶ谷さんは朝同様私の顔を右手で挟んで余計変な顔にさせる。



「もう!やめてください」

「そんなこと言うなよ。結構かわいくて好きなんだけど、その顔」



『かわいくて好き』、なんの気なしに彼が言った言葉に、またドキリとしてしまう自分が憎い。




からかわれてばかりで、むかつく。いちいち反応してしまって悔しい。

だけど、やっぱり嫌いだとは思えないから。

夫婦らしさ、というものを、私からも見せられるよう努力してあげようじゃないの。






「はい、これ」



翌朝。私より1時間ほど遅れて起きてきた津ヶ谷さんに、私は巾着で包んだお弁当を差し出した。

それを見て、津ヶ谷さんは目を丸くして首をかしげた。



「これは?」

「彩和さんが早起きして作られたんですよ。自分もたまには妻らしいことをしたい、って」



朝食のおかずであるお新香を小皿に盛りつけながら小西さんが答えると、津ヶ谷さんは信じ難いというかのように私とお弁当を交互に見る。


< 62 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop