旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「いや?甘いの、超好き」
そして、いつもの意地悪な笑みとは違う、子供のような歯を見せた無邪気な笑顔を見せた。
不意打ちの思わぬ表情に、胸はキュンとときめきを隠せない。
その笑顔も、反則だよ。
不安でいっぱいだった心を、一瞬でこんなにもときめかせてしまう。
安心感や嬉しさ、明るい気持ちでいっぱいになる。
つられて笑うと、津ヶ谷さんは思い出したように言う。
「あ、そういえば今朝小西さんから『かわいい一面をお持ちなんですね』って言われたんだけど。なんの話だ?」
「へ?あ!!」
言われて思い出すのは、昨日私が小西さんについた嘘。
すっかり信じた小西さんは津ヶ谷さんに言ってしまったらしい。
「……下手くそな嘘で誤魔化したな?」
「ご、ごめんなさい……!」
私の発言内容をなんとなく察しているらしい。その目にじろりと睨まれ、私は肩をすくめて謝った。
その時、背後のドアが突然ガチャリと開く。
「失礼しまーす、あっ、津ヶ谷さんこんなところに!」
その声とともに現れた後輩社員に、私たちの空気はそれまでのものから一変する。
距離を離して顔を背け、いかにも『お互い真面目に新作を確認しているだけです』といった雰囲気を出した。
「津ヶ谷さん、部長が探してましたよ」
「ありがとう、今行くよ」
津ヶ谷さんも表情をパッと王子に変えて、 会議室を後にした。
たった一瞬で変わってしまう空気。
完璧には程遠い私も、王様な津ヶ谷さんも、ふたりの時だけの秘密。
私だけが知っている、彼の素顔だ。
それが少し嬉しく思えてしまうのは、どうしてだろう。