旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
5.染まる横顔
ふたりで出かけた日曜日を終え、迎えた翌朝。
月曜に待ち受けていたのは、満面の笑みの小西さんからの冷やかしだった。
靴を買ってもらった話をしたら、案の定小西さんは『ラブラブじゃないですか~』と笑っていた。
けれど、買ってもらった靴は紙袋にしまって部屋の片隅に置いたままだ。
なんだかもったいなくて、当分履けない気がした。
それから数日が経った、木曜の午後。
「はい、かしこまりました。ありがとうございます。それでは失礼いたします」
人の行き交うオフィスで、電話を終えて受話器を置く。
ふぅ、なんとか少し大きな営業の交渉がうまくいきそうだ。
安堵しながら見渡す室内には数名の社員がそれぞれ仕事にとりかかっている。その中に津ヶ谷さんはいない。
今週に入って社員が一名体調を崩し連休となり、その分の仕事がほぼ津ヶ谷さんにまわっているのだ。
仕事が出来る人とはいえ、本来の自分の仕事もあるため当然忙しいようで、朝は早いし夜は遅い。
ここ数日夕ごはんも小西さんとふたりきりで過ごしている。
同じ家に住んでいるのに、顔を合わせるのは朝ちょこっとだけ。それがちょっと寂しい気もする。
けれど、毎朝手渡すお弁当箱を受け取って笑ってくれる。そのことが、嬉しい。
「桐島さん」
不意に背後から名前を呼ぶ声に、ドキリとする。
振り向くとそこには、ちょうど外回りから帰ってきたところらしい津ヶ谷さんがいた。