旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
私は、地元に趣味を理解してくれる友達もいるし、親だってもちろん素の私を知っている。
完璧な自分の仮面を被っているのは、大学以降に出会った人たちの前でだけ。
けれど、津ヶ谷さんは違う。
会社でも家族の前でも、家の中でも、仮面を被り続けている。
息苦しく、ないんだろうか。
外したいと思ったり、投げ出したくなったりしないんだろうか。
胸がぎゅっと、切なさに締め付けられた。
その苦しさをこらえて、体を起こして縁側に座り直すと彼の方を見る。
「それって、寂しくないですか?」
本当の自分を見せられない。
見せたところで理解されないだろうと諦める。
その寂しさを私も知っているから。
見つめて問う私に、津ヶ谷さんは横になったままこちらを見た。
そんなことを言われるとは思わなかった、とでもいうかのような不思議そうな表情だ。
「……そうだな。そういう感情も、前はあったかもな」
「前、は?」
「あぁ。けど今は、寂しくなんてない。本当の自分を見せられるし、それでも離れていかないような奴がいるからな」
津ヶ谷さんはそう言ってそっと微笑む。
それは、つまり私のこと?
私がいるから、寂しいと感じないということは、少しくらいはこの生活を悪くないと思ってくれているということだろうか。
そうだったら、嬉しいな。
その感情を表すように、自然と笑みがこぼれた。
「まぁ、離れないじゃなくて逃げられないのほうが正しいかもしれないけど」
津ヶ谷さんはそう言って笑うと、姿勢を変え、私の膝に頭を乗せて横になった。