強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
ピンポーンピンポーン
リビングから来客を告げるベルが鳴っている。その音で秋文は目を覚ました。
部屋は夕焼けで赤く染まっていた。
「寝過ぎたな………最近、寝不足だったからな。」
独り言を言いながら、リビングにあるインターフォンを見ると、見慣れた顔が2人写っていた。
出と立夏だ。
立夏は荒い映像でもわかるぐらいに不機嫌そうに立っている。今この2人に会ったら面倒な事になりそうだったが、ここで無視した方が更に大変なことになるのを分かっていたので、「今開ける。」と返事だけして、玄関に向かった。
それに、この2人ならば、きっと千春の事を詳しく知っていると思った。
秋文がドアを開け、「悪い、寝てて遅くなった。」と、2人を部屋へと入るように促した。
すると、立夏がずんずん近づいてきて、何も言わずに思い切り拳で秋文の脇腹を殴った。容赦なく、2回も。
「いーーーっっ!!てぇーな、何すんだ、立夏っ!」
「バカ秋文っ!私の親友に何してんのよ!ヘタレ男っ。」
「おまえなふざけんなよ!喧嘩売ってんのか?」
「そうよ!」
「秋文ー。キッチン借りるぞ。」
「…………あぁ。」
「出、何で何も言わないのよ!」
いつものように、口喧嘩をしてる秋文と立夏の横を平然と歩いて持ってた袋からテイクアウトしてきた料理をテーブルに並べ始めた。
立夏は文句を言っているが、秋文はホッとして出に近寄った。
「話は後でしよう。秋文は寝起きなら何も食べてないんだろ?」
「あぁ、昨日の夜から食べてないんだ。」
「だろうな。」
出は苦笑しながら、「皿借りるぞ。」と言って、千春が持ってきた食器を並べていく。それを複雑な気持ちで秋文は見つめた。
「飲み物あるか?」
「あぁ……冷蔵庫になにかあるはずだ。」
「じゃあ、少し貰うか…………秋文、これは?」
冷蔵庫を開けた出は、中身を指差して聞いてくる。何か不思議なものを置いた記憶はないので、秋文もその中を覗き込む。
「これは………。」
そこにはタッパーに入った料理が沢山入っていた。それぞれに「お肉の野菜炒め」「ロールキャベツ チンして食べてね。」「デザート ババロア」などなどメモ書きまで残してあった。
「千春が作って行ったんだ。」
「そうか……。これは、おまえが食べるべきだな。日持ちするものもあるみたいだし。」
「あぁ。」
冷蔵庫を眺めすぎていると、ピー!と機械音が鳴った。早くドアを閉めろと言っているようだった。冷たい風が体に感じる。小さくため息をついて、秋文は冷蔵庫を閉めた。