強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
秋文はトレーニングをしながらも、考えることは千春の事ばかりだった。
千春は別れたつもりなのか。
もう、彼女とは会えないのだろうか。
千春は俺を嫌いになったのか。
そんなことばかりを考えてしまう。
けれど、朝の空気は秋文の頭を冷静にしてくれていた。
千春がもし別れたと思っていたとしても、もう一度付き合ってはいけないわけではないのだ。何度でも、彼女に告白をしていいはずだ。
千春が断ったとしても、諦められるわけがなかった。何度でも、気持ちを伝えていけばいい。秋文は、そう思った。
千春の居場所がわからなければ、探せばいい。今は探すときではないし、スペインに行ってしまえば忙しくなるだろう。けれども、休みがないわけではない。時間は作るものだ。
自分がやって来たことに自信が持てたから、秋文は千春の元へ行こうと思った。
それに、そもそも千春が帰ってこないと決まったわけではない。
千春は荷物をほとんど持っていったのだ。
秋文の部屋の鍵も一緒に。
鍵を持っていったという事は、あの部屋にいつか戻りたいと思ってくれているのではないか。
秋文はそう思えてならなかった。
あとは、秋文が千春を信じる事しか出来ないとわかると、気持ちがすっと楽になった。
千春を信じるなんて、とても簡単な事だ。
遠い場所からでも、彼女は迷い苦しみながらも、きっと見ていてくれると、秋文は強く信じている。
左腕にある時計を見つめれば、千春の視線が感じられる。そんな気がして、秋文は走りながら微笑んでしまう。
彼女が導いてくれた夢を叶えるために、秋文はまた足を早めたのだった。