強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
秋文はあの部屋にいるんだ。
それを知っただけでも、すぐに飛行機に乗って飛んで行きたかった。
けれども、不安が大きい。
どんな結果になっても、彼に会って話しをすると決めたはずなのに、それさえも迷ってしまうぐらいに彼から話しを聞くのが怖くて仕方がなかった。
だけれど、それで立ち止まっていたらまた、後悔する。それも千春自身が十分すぎるほどわかっている事だった。
逃げない、そう決めたのだ。
「立夏。私ね、ちょうど2日後に日本に帰る予定だったの。」
『え!?そうだったの……?それって……。』
「うん。秋文と話がしたくて。本当はそのままスペインに行こうって思ってたんだけど。怪我は本当に悲しいけど、でも、タイミングが良かったみたい。」
『そう、ね。………ちゃんと会って話せるといいね。』
「ありがとう、立夏。」
電話を切る前に、もう一度今までの謝罪をしてから、通話を終えた。
上司に知り合いが怪我をした事の連絡だったと伝えると、1日早めに日本に帰ってもいいと言われたけれど、それは断った。
仕事を放り出す事はしたくなかったし、ゆっくりと自分の気持ちを整理してから秋文に会いたかった。
でも、家に帰るとそれを後悔してしまった。
一刻も早く秋文に会いたかった。
自分以外に好きな人が出来ていたことを考えて行けば、傷つくのは少しで済むはずだとわかっていた。
けれど、彼に優しく抱きしめられてキスされる事を考えてしまう。秋文は怪我をして大変な思いをしているのに、自分は何を考えているのだろうかとも思う。
そんな風に考えながらも、千春は大切な鍵を握りしめながらベッドの中で眠りについた。
何故か秋文の香りがしたような気がして、千春は胸がキュッとしめつけられる思いがした。
きっと夢の中では、昔のように笑顔で抱き合って眠る夢を見れるだろう。
もう何年も見ていない彼の笑顔を夢見て、千春は目をぎゅっと閉じた。