強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました



 その時だった。
 来客を告げる呼び鈴が鳴った。
 秋文がそれに出ると、「久しぶりだな。」という、声が聞こえてきた。画面に写っていたのは、出だった。

 
 「すみません。友人が来てしまって……。」
 「出選手でしょ!?いいじゃない。一緒にご飯食べましょう。」
 「秋文君さえよかったら、どうぞ。」

 この夫妻はどちらもサッカー好きだった。
 そのため、東と美和子も喜んでいてので、出を部屋にとおすことにした。
 

 「あ、秋文君。そういえば、リハビリ中に来客があったわよ。」
 「え……誰ですか?」
 「女の子だったわよー。彼女いないって言ってたけど、もしかしてファンの子かしら?」

 
 心配そうに言う美和子の言葉に、秋文は少し気になってしまい、いろいろと質問をしてしまう。


 「どんな人でした?」
 「可愛くて、髪が長い女の子だったわよ。秋文くんぐらいの年だったかな。」
 「他には?何か言ってませんでしか?」
 「なんか、私が出たらビックリしてたみたい…………あ、この子に似ているわ。この写真の秋文くんの隣にいる子。」


 美和子が指差したのは、リビングにある写真立てだった。
 それは大学を卒業したときに四季組の4人で撮ったものだった。立夏が4人にお揃いの写真立てに入れてくれたのだ。「飾んないと怒るからね。」という言葉と共に。
 
 その中には秋文の隣で修了証をもって微笑む千春がいた。

 
 「っ、帰ってきたのか!?」
 「えっ、秋文君!走ってはダメだ。」

 秋文はそう呟くと、廊下を駆け出した。
 東が秋文を止めたけれど、秋文はそれを守っている余裕すらなかった。玄関に置いてあったスマホと車の鍵を持って、家を出ようとドアを開けた。
 すると、ちょうど秋文の部屋の前に到着した出と鉢合わせした。
 慌てた様子の秋文を見て、驚いた顔をしている。


 「どうしたんだ?来客中なんだろ………どこに行くんだ?」
 「千春が、千春が帰って来てるんだ!きっと勘違いしている、早く会わなきゃ……っっ!」
 「待て、落ち着け!」


 走り出そうとする秋文の肩を掴んで止める。
 それを振り払おうとするが、出は力強く掴んで離さなかった。


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