強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
「もしもし、出?久しぶりだね。電話なんて珍しいけど、何かあった?」
泣いているのを誤魔化してバレないように、言葉を紡ぎ続ける。けれど、相手からの返答がない。
どうしたのだろうか?やはり、いつもの出とは違うと感じて、心配になってしまう。
「どうしたの?出…………?」
『………千春。俺なんだ。出じゃなくて、悪い。』
躊躇うように出した小さな声。
それだけでも、千春はすぐにわかる。
ずっと聞きたかった声。
名前を呼んでほしかった彼の声が聞こえた。ずっとずっと、夢の中でしか聞いていなかった、低音で心地いい優しい声。
「……あ………秋文なの?ど、どうして………。」
『悪いな。どうしてもお前と話がしたくて、出から電話借りたんだ。こっちなら出てくれると思って。』
「……ごめんなさい。私が、秋文の電話出ないからだよね。」
『そんなことはいいんだ………。千春、おまえに話したいことがある。』
真剣な彼の声。
聞いているだけで、泣いてしまいそうだった。
きっと、泣いたら彼は気づいてしまうだろう。空いている手で目をギュッと押さえ、目を瞑って堪える。
「私も、秋文と話したいことあったよ………。」
『そうか。……電話で話すような事じゃないよな。明日、午前中は用事があるんだ。昼過ぎに、俺の部屋に来てくれないか。』
「うん。わかった。」
『おまえ、俺の部屋の鍵持ってるだろ?俺がおそくなったら部屋に入って待ってていいから。』
「え………。部屋の鍵………。」
『持ってないのか?』
「持ってるけど……。」
部屋の鍵は、もう違うものに変えたと思っていた。新しい恋人がいるのだ。
私が秋文の部屋の鍵を持っているのはおかしいことだ。もしかしたら、その鍵を返して欲しいということだろうか。
そんな疑問を持ちながらも、秋文にやっと会える事が嬉しくて仕方がなかった。