強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
「久しぶりにおまえを抱き締められるんだ。もう少し感じさせろよ……おまえの事。」
「………で、でも。秋文には新しい彼女が………。」
「あぁ、やっぱり昨日の事、勘違いしてるんだな。………悪かった。」
「………勘違い?だって、モデルさんと交際してるんじゃ………。」
こうやって彼に抱き締められるのは嬉しい。
けれど、彼に新しい彼女がいるとしたら、とても複雑な気持ちになってしまう。
どうして、秋文はこんなにも優しくしてくれるのだろうか、と。
すると、秋文は「まだ知らなかったのか……。」と苦笑しながら説明をしてくれる。
「交際疑惑の報道が出てすぐは、俺もそれで騒がれてるって知らなくて。知ったのは結構後なんだ。スペインのチームでも、そんな話はデマだってわかってたから相手にしなかったみたいで。その後に日本のテレビの取材があったからきっぱり違うって話したよ。もちろん、付き合ったこともないって。」
「そうだったんだ………。私、本当の事を知るのが怖くて、それから日本のニュースとか見ないようにしてたから。」
「だから、俺からの連絡も止めてたのか………。」
「ごめんなさい……。」
「それに昨日の人はリハビリの先生の奥さん。わざわざ食事まで作ってくれたんだ。俺はリハビリ中だったから、変わりに千春が来たときに出てくれただけだ。」
自分の勝手な思い違いだった事を反省しながらも、秋文が新しい彼女がいないことを嬉しく思ってしまう。
自分から離れていったのに、この腕の中から離れたくない。
「私、勝手に秋文の夢を決めつけて、スペインに行った方がいいって気持ちを押しつけた。そして、自分のせいで行けないんだって思って、勝手に離れて………そして、すごく寂しかった。秋文に相談すればよかったのに、自分よがりな考えで、秋文を困らせてた。………だから、誰か別な人と秋文が付き合っても仕方がないと思ったの。」
「千春………。」
「でも、他の人と付き合おうと思ってもダメだったし、秋文を忘れようとしてもダメだった。怪我をしたら心配で仕方がなかったし、すぐに会いたいって思った。…………本当にごめんなさい………。」
自分の伝えたかった想い、謝りたかった事を秋文に素直に話した。
きっと彼は幻滅するかもしれない。もう恋人として最後の日になるかもしれない。
そう思うと話したくない自分の汚い気持ち。
それも話をしなければいけないと、千春は決意した事をしっかりと話しきった。
秋文の次の言葉が怖い。
俯いたまま、彼の言葉を待った。
すると、感じたのは言葉ではなく、秋文が頭を撫でる感触だった。