強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
「何か秋文にしてあげたいことでもあるの?」
「千春は本当に鋭いな。よく見ているよ。」
「……そんな事ないよ。秋文とのこと、3年もかかっちゃったし。」
「それでも、秋文は幸せそうなんだ。良かったとおもうよ。」
千春を慰めるように、微笑みながら話をしてくれる出。千春は彼の優しさに何度助けられただろうと、改めて思う。幼馴染みであり兄のような彼をとても尊敬していた。
そんな出がまっすぐ前を向いて、遠くを見つめた。
そして、昔の話をしてくれてのだ。千春が知らない出と秋文の小さい頃の話を。
「まぁ、よくある昔の話なんだけどな。中学の頃に両親にサッカーやめて勉強をするようにって言われたことがあって。それを秋文に話したら、その日のうちに俺のうちまで来て、両親に話をしてくれたんだ。」
「え……もしかして、怒った、とか?」
千春がハラハラしながらそう聞くと、出は笑って「千春もそう思うだろ?」と、懐かしそうに目を細めていた。
「俺もそう思ったんだ。けど、秋文は真剣に「出はGWとして優秀だから絶対にプロになれる。だから止めさせないでください。」って頭下げたんだ。さすがのうちの両親もビックリしてたよ。」
「秋文がそんな事を……。」
「まぁ、それでも両親は納得してくれなくて、結局条件付きで中学でのサッカーを許してくれたんだ。」
「条件?」
「あぁ、卒業までにユースに入る事。選抜メンバーに選ばれる事だった。かなり無謀だったけど、サッカーが出来るか出来ないかだったから、俺たち2人は死ぬもの狂いでやったよ。それこそ、中学の頃はサッカーしかしてなかったな。」
初めて聞く2人の話。
条件の結果はもちろん聞くまでもない。
秋文と出は、必死な思いで大好きなサッカーを続けてきたから、今のプロ選手であり代表選手に選ばれたのだろう。
「じゃあ、出が秋文の事をいろいろお世話するのって……。」
「あぁ。あいつがいなかったら、俺はサッカー止めてた。秋文には感謝してるんだ。そのお礼に、恋のキューピットぐらいはやる。まだ足りないぐらいだけどな。」
きっと出は誰にも話すつもりはなかったのだろう。
恥ずかしそうにそう言いながら、鼻をかきながら頬を赤く染めていた。
「そういうのいいね。男の友情ってやつかな?かっこいいと思う。」
「…………秋文には内緒だぞ。」
「……うん!」
秋文は、絶対に話してくれないだろう昔の青春の話。千春は、ますます幼馴染みの2人が大切になったし、秋文を好きになった。
心がポカポカした気持ちになったときだった。
「何が俺には内緒だって?」
電話を終えたのか、廊下から秋文が少し不機嫌そうな表情をしてやってくる。
そして、テーブルに置いてあったコーヒーを一口飲んで、床に座った。
「内緒だから話せないよねー、出ー?」
「あぁ、そうだな。千春の下着がピンクだったって話だもんな。」
「「出っっ!!」」
千春が真っ赤になり、そして秋文が怒った顔で同時に立ち上がり、叫ぶと出は楽しそうに笑ったのだった。