強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
出が帰った後、二人は遅めのブランチを食べた。
2人で食べ終わった食器を洗っていると、終わった頃に不意に秋文に後ろからぎゅっと抱きしめられた。そして、千春の肩に顔を埋めて「あぁー……落ち着く。」と、吐き出すようにそう言葉を洩らしていた。
こうやって甘えてくる事は、以前もあまりなかったので千春はドキドキしてしまう。
冷静を装いながら、千春は最後の皿を置いて、秋文の髪をそっと撫でた。
「どうしたの?秋文、疲れた?」
「いや………おまえさ、いつアメリカに帰るんだ?」
「あと5日ぐらいかな。」
「そんなに短いのか。」
千春は一時帰国しただけで、あと数日したらまたアメリカに戻ることになっている。
それに秋文も治療が終わったらスペインに戻るのだ。
お互いの気持ちを確かめ合って、それぞれの仕事を認め合ったのだから、すこしの別れを受け入れなければいけない。それはよくわかっていた。
けれど、大好きな人と離れてしまうのは、どうしたって辛いことだった。
秋文だけではない。千春も秋文とまた離れてアメリカに戻るのが寂しくて仕方がなかった。
自分達の選らんだ道。だけれど、迷うことだってある。
「寂しいね………。」
「……実はな、俺、春にはスペインのチームから抜ける予定なんだ。」
「え!?そうなの?」
「あぁ。契約の期間も終わるから更新しないつもりなんだ。日本代表に選ばれて思ったよ。やっぱり日本でプレイしたいって。スペインではいろいろ学べたし、いい思い出になった。」
「そっか………。じゃあ、帰国の時期は同じになるかもしれないね。」
「え……。」
千春の言葉を聞いて、秋文は千春の肩に置いていた顔を上げて、驚いた声を上げた。
それを見て、千春はくすくすの笑ってしまう。
秋文が嬉しそうな顔になっているのを、見なくてもわかってしまったのだ。
「私も赴任は長くて2年だったから。そろそろ日本に戻ることになると思うんだ。まだ、正式に決まったわけじゃないけど。」
「そうか。ならまた、日本で会えるかもしれないんだな。」
「そうだね。」
千春は、笑顔でそう言いながら、抱きしめてくれている彼の寄りかかり、今度は千春から甘えるように体を預けた。
すると、秋文は千春の体をくるりと変えて、向き合うように立たせた。
そして、「千春?」と、優しく名前を呼んでくれる。千春が見上げると、微笑んだまま話を続けた。