強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
5話「特別が欲しい」
5話「特別が欲しい」
秋文に告白されてからというもの、千春は彼を意識するようになってしまっていた。
例えば、スマホの電話やメールが来る度にドキッとしたり、テレビでサッカーの試合を放送していると、ついつい彼を目で追ってしまったり。
そんな自分に気づいては、冷静になるように深呼吸をしたりして、自分の気持ちを確かめようとしていた。
今は、秋文に告白された事で気持ちが盛り上がっているだけなんだと、千春は思っていた。フッとした瞬間につい最近まで付き合っていた先輩の事を思い出しては切なくなってしまう。
別れるときは、辛いことを言われたけれど、付き合って一緒にいる時間はとても優しくてたよれる先輩だった。甘やかしてくれたし、「かわいいかわいい。」と、頭を撫でてくれたりもした。
そんな時間がとても幸せすぎて、今は辛い。
忘れたくないけど、忘れたい。
そんな気持ちがあって、秋文の優しい言葉にすがっているように感じてしまうのだ。
そう思ってしまうと、千春は秋文が好きなのか、わからなくなってしまっていた。
休み明けの平日の夜。
秋文の所属しているチームの試合は休みだった。それを見ては、秋文から連絡があるかもしれないと、朝からドキドキしていた。
しかし、今日は通っている英会話教室の日であり、帰りはいつも遅くなってしまっていた。
秋文から連絡が来るだろうか。もし、また突然、千春の家を訪ねていて、秋文を待たせてはいないか。心配になってしまったけれど、約束をしているわけでもないし、彼に告白され返事を待ってもらっているのに、自分かこんなにも早く連絡するのは恥ずかしかった。
自分の妙なプライドがイヤになりながらも、結局秋文に連絡をしないまま、英会話教室がスタートした。
今日のレッスンは全く集中できずに終わった。