強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
「連絡なし、か。」
英会話教室の部屋を出て、すぐにスマホをチェックするが、誰からも連絡は入っていない。
秋文からも。
もちろん、先輩からも………。
寂しいな、そんな気持ちを感じてしまい、千春はどちらからの連絡を待っていたのか。
それを深く考えないようにして、とぼとぼと賑やかな街を歩いてく。春になったとはいえ、スプリングコートが手放せない夜。千春は、ぎゅっとコートの前を手で握りしめながら、夜に溶け込むように一人静かに家を目指した。
信号待ちで止まっていると、少し離れた場所に秋文と同じ車が停車していた。少しドキッとするけれど、その助手席には女性が乗っていた。
別人の車だ、と思って視線を逸らそうとした時に、秋文がどこかの店から出てきてその車に乗ったらのだ。
「秋文だ……。」
呆然としながら、その車をただ眺めてしまう。綺麗な女の人は、秋文に笑顔で何かを話し掛けていた。秋文は何か言ったあとすぐに車を出して、千春の前からその車はあっという間に去っていった。
「なんだ……。やっぱり特別じゃないんだ。」
誰かの特別になりたい。
それは千春がずっと思い、恋愛をしてきた理由だった。好きになってくれた人と恋をすればきっと、その人の1番になれる。そう思い続けていた。
けれど、その1番の時期はいつも短くて、あっという間だった。
何かあったとき、1番初めに思い出してくれる人。そんな運命のような人に出会いたかった。
先輩も、秋文も特別にしてくれると思っていたけれど。
やはり、違った。
「遠征から帰ったすぐに来るって言ってたのに。秋文の嘘つき。」
何故か泣きそうになった目から涙が溢れるのを必死に我慢しながら、千春は家へと急いだ。