強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました




 その次の日の昼間に、秋文から連絡が来ていた。今日の夜に会えないか、という誘いのメールだった。
 すぐには返事が出来ず、しばらく考えた後に「残業があるので、今日は会えない。」と返信をした。
 昨日の事が頭から離れず、冷静に彼と話せる気がしなかったのだ。
 残業なんて、本当はなかった。
 
 嘘をついてしまった事に罪悪感を感じながら、千春は帰路についた。


 すると、千春のマンションの前に見覚えのある車が停まっていた。
 昨日も見た、あの車。助手席にあの女の人が座っていた、秋文の車だった。

 見つけた瞬間に、こっそりと逃げ出そうかとも思ったけれど、すでに遅く運転席のドアが開いた。



 「なんだよ、残業じゃなかったのかよ。」
 「………なんで、ここにいるの?」
 「おまえが帰ってくるまで待つつもりだった。」
 「……そう、なんだ。……ごめんなさい、嘘ついて。」


 罪悪感から、秋文の顔を直視出来ずにうつむいたまま彼に謝った。
 千春にとって、秋文は大切な友達だ。
 何があっても嘘をつくべきではなかった。話をしなければと、彼の顔を見た瞬間に後悔の念に駈られてしまったのだ。

 
 「気にしてない。とりあえず、車乗れ。」


 秋文は、助手席のドアを開け、千春に車に乗るように促した。


< 19 / 166 >

この作品をシェア

pagetop