強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
「………私、やっぱりまだ先輩が気になってた。甘えていいって、言ってくれた秋文に甘えすぎてた。」
「先輩と何かあったのか?」
千春は、こくんと小さく頷いて先程の事を話始めた。3人に話すのが怖かった。嫌われてしまう、呆れられてしまう。そう思うと、どんどん声は小さくなる。
それでも話したのは、この四季組が好きだからだった。隠し事はしたくなかった。
「うちの会社に来ていた先輩に呼び出されたの。その時、彼氏がいるからって断ればよかったのに、私、断れなかった。もう1回やり直そうって言ってくれるのかなって思ってたんだと思う。………もし、先輩にそう言われてたら、自分はどうしたのかと思うと、本当に怖くて……自分が、ここまで最低だと思ってなかった。………ごめん、なさい。」
「……先輩に何て言われたんだ?おまえ、なんでそんなにショック受けてる?」
「……それは。私が軽い態度でついていったのがわるかったから、その………。」
言葉を濁すと、秋文が「教えて。」と、言って顔を覗く。
告げ口のような事を言いたくはなかった。けれど、付き合っている彼には言わなければいけない事なのかもしれない。
そう思って、ゆっくりと話始める。
「別れてショック受けてるなら、その………体の関係だけでも続けようか?って。」
「なっ………。」
「最低だな……。」
「断ったよ、もちろん。そしたら、顔だけなんだから、猫被るのやめた方がいいって。付き合う人が可哀想だからって。私が先輩に自分を隠して付き合ってたから、あまり良く思ってなかったみたい。……自業自得だから。」
千春が話終わると、その場がシーンとした静寂に包まれる。隣からの話し声やカチャカチャと食器がぶつかる音などが、聞こえてくる。
千春は、どうしていいのかわからなくなり、身を縮めてその静けさに堪えた。自分がこの場を悪くしてしまったのだ。申し訳ない気持ちだった。
「俺は断ったんなら別にいい。千春に元彼氏を忘れるために利用しても良いから付き合ってほしい言ったんだ。だから、気にしてない。」
「……そんな。秋文ダメだよ。……そんなに私を甘やかさないで。」
「だったら、俺と別れたいのか?」
「秋文………。」
「俺は別れない。やっとおまえと付き合えたんだ。……それに、どう考えても、おまえの気持ちに気づいて、そんな事言ってきた奴が悪いだろ。」
秋文は、そう言うと千春の頭を優しく撫でてくれる。「大丈夫だ。」と伝えるように。
「………よくないわよ。何それ。」
「立夏………。」
話を聞いてからずっと黙っていた親友である立夏が突き放すような口調で千春を見つめた。
その顔は、今まで千春に見せたことがない、とても怖い表情だった。