強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
「友達と一緒に来てるので。ごめんなさい……。」
「女友達でしょ?見かけたよー!一緒でいいなら。ね、いいでしょ?」
「えっと………ごめんなさい。」
小さく頭を下げて謝ると、「えーー。そんなー!お姉さん可愛いからタイプなのにー。」と、残念がっていた。
褒められる事は嬉しかったけれど、千春は今は秋文だけを見ておきたかったのだ。
「もしかして、彼氏いるんですか?」
「えっと………はい。」
「もしかして、やっと一色先輩と………あ、やばっ。」
「え………どうして秋文の事。」
千春は、改めて声を掛けてきた男の人をジロジロと見つめる。聞いたことがある声のような気していたけれど、サングラスをしているのでよくわからなかった。
「もしかして...静哉くんっ!!」
「わぁーーー!先輩、シーっですよ。」
「ごめんなさい……気づかなくって。驚いて大きな声出しちゃった。」
千春は、男に謝ると「俺が悪いので。」と笑ってくれた。
「本当に、静哉くんなの?」
「はい!ほらっ……ね。」
サングラスを少しずらし、瞳が露になると、そこにはくりくりとした大きく少し茶色の目があった。愛嬌のある顔は、昔と変わらなかった。
藤原静哉。高校の頃の秋文と出の後輩だった。秋文に何故かなついており、いつも部活や試合の時は彼の傍にいた。そのため、千春や立夏とも仲が良かった。
そして、今は日本を代表するFWで、何回も世界大会に出ている有名人だった。その彼が何故こんなところにいるのかわからなかったけれど、久しぶりの再会を千春は喜んだ。
「静哉くん、かっこよくなったね!わからなかったよー。」
「先輩は相変わらず可愛いですねー!」
「褒めても何もでないよ。それより、どうしたの?こんな一般観覧のところへ来るなんて。」
「俺、試合会場の雰囲気好きで、よくお忍びで来るんですよ。今日は俺オフだったんで、先輩2人の試合を見に来ました。」
そうやって、にっこりと笑う。
その昔と愛らしい微笑みは、大人になった彼でも変わらず、千春は安心してしまった。
「それより、先輩!一色先輩と付き合い始めたんですか?!」
「………うん。つい最近なんだけどね。」
「なるほどー!だから、ますます可愛くなってるんですね!」
「え?!」
天然なのか、女の子をドキドキさせる言葉を自然に言いながらニコニコと話をしている。そういう無邪気なところも変わってはいなかった。