強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました



 「バカ静哉に何にもされなかったか?」
 「う、うん。サッカーの事、いろいろ解説してくれて楽しかったよ。」
 「ったく、試合前に変な連絡くるからイライラした。でも、お前見つけられてよかったよ。」
 「え……私の居場所わかったの?」


 あの時、客席を見つめていたのはたまたまだと思っていた。いや、思うようにしていた。恋人だからと言って、いつでも見ているわけじゃない。そう思うようにしていたのは、勘違いだった時にショックを受けるのは千春自身だからだ。

 けれど、秋文は沢山の人の中から見つけてくれたのだ。そして、試合の合間でも、心配してくれたのが嬉しかった。
 抱きしめた体をゆっくりと離し、秋文は少し照れ笑いを浮かべながら、千春のすぐ隣にくっつくように座った。


 「どこの席か事前にわかってたしな。でも、試合におまえが来てるって思うと、力入るな。」
 「最後のゴールのアシストパス、すごいかっこよかった!今回勝てたのは、秋文のパスが良かったからって、周りの人たちが言ってたよ!」


 今日の試合の興奮が甦ってきてしまい、千春はテンションが高いまま、今日の試合の感想を話してしまう。後半終了間際の決勝点をアシストした秋文のパスを見た瞬間は、そんなにサッカーに詳しくない千春や立夏でさえ、歓声を上げてしまった。


 「久しぶりに生でサッカーしてる秋文を見れて、感動しちゃった。」
 「……そうか。また来てくれ。そしたら、いつも以上に頑張れるから。」

 
 夢中になって、試合の感想を伝えてしまったけれど気づくと、本人を目の前にかっこいいや感動したと言ってしまっていた。
 秋文も、面と向かって褒められてしまい、少し困った顔をしながらも、頬を染めて「ありがとう。」と言いながら、頭を撫でてくれる。

 応援することで、秋文の力になるのならば、ぜひ来たいな、と思った。それに、サッカーをしている秋文をまた生で見たいのだ。とてもかっこいい彼の姿を。





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