強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました



 「そろそろ帰るか。明日仕事だろ?」
 「え、秋文、今来たばっかりだよ。」
 「少し千春に会いたかっただけだ。遅くまで待たせて悪かったな。」
 「そんな……。」 



 まだ、もっと一緒にいたい。
 そんな気持ちが、心の中で広がっていく。

 試合では沢山彼の姿を見れたけれど、こうやって秋文を近くでは感じられなかったのだ。寂しいと思ってしまう。
 けれど、今引き留めたら……それがどういう意味になるのか。もう十分に大人な千春はよくわかっていた。

 だからこそ、彼に「まだ少し。」とは、言えなかった。それがどうしてなのか、まだ千春には自分の気持ちがよく理解できていなかった。
 きっと「まだ一緒にいたい。」と伝えれば、一緒にいてくれるはずなのに。


 「ん?どうした?」
 「えっと………あ、そうだ。」


 楽しみにしていた物をすっかり忘れてしまっていた。きっと、秋文に会えたことで舞い上がっていたのだろう。
 千春は、バックから悩んで選び、買ったものを取り出した。
 そして、2つのユニフォームのキーホルダーを両手に置いて彼に差し出した。
 1つは一色と書いてある10番のユニフォーム型のキーホルダー
 もう1つは、千春と書いてある12番のユニフォーム型のキーホルダー。

 「俺のチームのユニフォーム?こんなのあるのか……。」
 「可愛いなって思って。……それに、秋文とお揃いにしたくて。ダメかな?……もしイヤだったら、両方私が付けるから。」

 お揃いが嬉しいだなんて、女の子の考えかもしれない。男の人は嬉しくもないのかも。そんな不安が今さら千春を襲い、彼に見せているのに、そのキーホルダーを引っ込めようとしてしまう。
 けれど、秋文はそこから1つのキーホルダーを取った。

 千春の名前が書いてある、12番のユニフォーム型のキーホルダーだった。


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