強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
「これ、貰うよ。」
「それ、私の名前書いてあるよ?」
「俺が自分の持ってても、何にも嬉しくないだろ。だめか?」
「違うの……私もそうしたいと思ってたの。」
このキーホルダーを買った時。
立夏と静哉は、「お揃い、いいですね。」と言った。そして、「千春は下の名前にしたんだね。自分の持ち物だし、名前の方がいいよね。」と言っていた。きっと、秋文には秋文のユニフォームの物。千春には、12番のユニフォーム。そう思っていたのだろう。
けれど、千春の考えは違っていた。
「私、秋文のユニフォーム持っていたかったの。それに、秋文には私の持ってて欲しかった。……けど、それって何か重いかなって思って……私と付き合ってるってバレたら、秋文は有名人だから困るのはわかってるし。」
彼にマイナスになってしまう事を頼むのは出来なくて。でも、諦めることも出来なかった。
だから、両方を出して秋文に選んでもらおうと思ったのだ。
「そんな事はない。恋人の話が出たら、普通にいるって答えてるし、俺だってお前のが欲しいと思ったんだ。それに10年以上の片想いだ。俺の方が重いだろ。」
「そんなことない!……秋文が私と同じ考えだった事、すごく嬉しいよ。」
「俺がずっと千春が好きだから、俺が千春の考え方に似てたんだろ。」
秋文はにこやかに笑い、受け取ったキーホルダーを見つめて微笑んだ。
「おまえのは、名前にしたんだな。」
「うん。………秋文には、名前で呼んで欲しいから。」
「なら、俺も名前にしようかな。」
「え……ダメっ!!」
「なんでだよ。」
「みんな秋文って呼んじゃうから。……それはちょっとイヤかも。」
思わず大きな声を出して否定してしまい、そして自分の嫉妬した心がバレてしまった。
それなのに、秋文は嬉しそうに、「そうか……。そうだな。」と、微笑むだけだった。
その顔が、試合時とは違う優しい表情で、千春はこっちの顔も好きだな、なんて心の中で思ってしまった。
その場で、スマホにキーホルダーをつけ、ふたりはお互いの家へと帰った。
千春は、ベットに入って眠るまで秋文とお揃いのキーホルダーを眺めて過ごしていた。
秋文も同じ思いだと願いながら。