強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
エントランスに入ると、先程の女性のコンセルジュはおらず、代わりに若い男性のコンセルジュがいた。彼は、秋文を見つけると「おかえりなさいませ。」と挨拶をしてくれた。すると、秋文はそのコンセルジュの方に近づき何かを話していた。その後すぐに、エレベーターへ向かったので、千春は彼の元へと駆け寄った。
「何を話してたの?」
「お前の事だ。ここに来たとき、部屋まで行けなかっただろ?」
「うん。今は個人情報とか厳しいしね。それに、秋文は有名人だから仕方がないよね。」
「まぁ、それもあるだけどな。前に住んでたところで、部屋の前までファンが来たことがあって。さすがに困ったから、ここに引っ越して、コンセルジュに伝えてない人は入れないようにしてたんだ。」
秋文は苦笑してそう言いながら、着いたエレベーターに乗り込んだ。千春は、エレベーターのドアが閉まった後に「そんなことあったの?!大変なんだね…………。」と少し大きな声で言ってしまった。
「さっき、コンセルジュにおまえの事、伝えておいたから、これからはすぐに部屋に入れるようになったから。」
「うん。……ありがとう。」
彼氏の家にすぐに行けないのはやはり寂しかった。けれど、こうやって千春の気持ちにすぐに気づいて、対応してくれる。誕生日当日に会いに来てくれたのも、自分が悲しむのを秋文はわかっていたのだろうと、千春はわかっていた。
そんな彼の優しさが、体に入り込んでくるようで、千春は胸がきゅんとした。
そんな秋文の優しさに触れてしまったら、ますます彼がいとおしくなってしまう。
隣にいる彼をこっそりと覗き見る。
その横顔を見るだけで、千春は頬が赤くなるのがわかった。