強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
「はい。入って。」
「ありがとう。お邪魔します。」
ドキドキしながら彼の部屋に入る。広い玄関には、乱雑に彼の靴が置いてあった。そこに、自分のパンプスが置かれただけで、とても嬉しくなってしまう。
「奥がリビングとダイニングだから。」
秋文は、先に廊下を進んでいく。
そんな彼を見つめると、彼の優しい熱を感じたくて、彼の後を歩いて、そのまま秋文の背中に抱きついてしまった。
自分でも驚く行動だったけれど、スーツ姿の背中から秋文の温かさと彼の香りを感じると安心してしまう。緊張しているのに、ホッとする。矛盾した気持ちだけれど、今はそれが心地よかった。
「千春……どうした?」
「……今日ね、やっぱり寂しかったんだと思う。秋文を責めてるわけじゃないんだよ。けど、誕生日は一緒にいたかったんだ。だから……こうやって今日一緒にいれて嬉しい。ありがとう、秋文。」
「千春……。」
秋文の体が動いたので腕を離し、こちらを向いた秋文を見上げた。
すると、秋文は笑って、「何言ったんだ?」と、頭を少し乱暴に撫でた。
「まだ、誕生日は終わってないだろ。お腹空いたし、夕食にしよう。おまえが作った料理、食べたい。」
「うん……。準備するね。」
「俺も手伝う。キッチンはこっちだ。」
スタスタと前を歩く秋文を、千春は見つめた。
いつもならば、抱き締めてくれたり、キスをしてくれるような雰囲気だったのに、彼はそっけなく去ってしまう。
やはり、疲れているのだろうか。それとも、本当にお腹が空いただけなのか。
千春は、自分だけが舞い上がっていた事が恥ずかしくなり、少し気まずい気持ちで彼のキッチンへと向かった。