強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました



 「そんなに嬉しいか?」
 「うん!これずっとつけてたいな。」
 「春先だけじゃないのか?」
 「いいの。冬だって桜の花みたくなるでしょ。」
 「そんなもんか?……まぁいい。早くケーキ食べないと帰るの遅くなるぞ。」
 「え……うん。」


 千春は、秋文の「帰る」という言葉を聞いて、一気に高まった熱が下がっていくのを感じた。
 今日はずっと一緒にいられる。
 そう思っていたのは、自分だけだった。

 秋文は、どうして一緒にいたいと思ってくれないのだろうか。付き合い始めたばかりだからなのか、キス以上は絶対にしない。
 でも、彼とはずっとずっと長い付き合いがある。それでは、ダメなのだろうか。
 自分がはしたない考えを持っているようで、恥ずかしくなってしまう。けれど、今日は秋文と一緒にいたい。

 そんな気持ちが勝っていた。



 「ねぇ、秋文。あと少しで誕生日終わっちゃうね。」
 「あぁ……そうだな。」
 「……終わる前に、もうひとつお願いしてもいい。」
 「……欲張りだな、おまえは。」
 「そうだよ。私、欲張りなんだよ。」


 いつものように、軽い言葉を交わす。けれど、千春の心の中はドキドキしていた。
 きっと、顔だけではなく首元や体も赤くなっているだろう。緊張からか目も潤んできてしまう。
 それでも、今は構わない。

 秋文に自分の気持ちが伝わるなら。



 「秋文、今日帰らなくてもいいかな?」


 
 秋文の表情を見るのが怖くなり、目線を逸らしてしまう。


 彼の返事を待つ時間はとても長く感じられた。





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