強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
「千春。秋文がすごく怖い顔で睨んでるぞ。」
「えっ!?」
「……それは素顔だ。もう、お前たちのやりとりには慣れている。」
「……そうだといいんだけどな。」
出は苦笑し、そして秋文はやや不機嫌そうな顔をしていた。
千春は、嫉妬してくれてるのかなと思うと、少し嬉しくなりながらも、秋文の機嫌を治さないといけないなと思い、自分の行動を反省した。
「出も買い物?」
「あぁ、オフだったから、いろいろ買い出しに来てたんだ。」
「そうなんだー。出は今から夕飯なの?」
「あぁ。」
「じゃあ、一緒にご飯食べに行かない?ね、秋文。」
「なんで、そうなるんだよ。デート中なんだから、出は遠慮しろ。」
「………じゃあ、お言葉に甘えて。」
「おまえな…………。本当に腹黒な性格してるよ。」
秋文はガックリとした顔を見せていたけれど、きっと本心では仲の良い親友とも呼べる出と過ごせるのを嬉しく思っているのを、千春は知っていた。
千春は、秋文と出に挟まれ守られるように、夜の街をゆっくりと歩いた。
★☆★
夕飯は、千春のリクエストでお好み焼きになった。そのリクエストを聞いた秋文は、気取らない所が千春らしいなと思った。
付き合い始めは、無意識にいい彼女になろう、可愛くあろうと頑張ってしまう事もあった。
けれど、今は楽しみながら無理のない程度でおしゃれをして、自分の気持ちを自分に伝えながら、付き合えているとは秋文は感じていた。
千春は、本当に全てを信じて、素直に話してくれている。
それなのに、俺は。
それを考えてしまうと、罪悪感だけが秋文の心に残ってしまっていた。
「で、秋文は千春に話したのか?」
「………いや、まだだ。」
千春が、席をはずしたタイミングで、出は秋文に問い掛けた。
それは、秋文がずっと考え悩んでいる原因の事だった。
「俺のチームでも、少しずつ噂になってるぞ。」
「………本当かよ。」
「他でバレて、メディアの情報で千春が知るのが1番まずいと思うぞ。」
「わかってる。もしメディアにバレたら契約しないと言ってるから、そこら辺は大丈夫だ。」
ため息をつきながら悩ましい顔で秋文は小さな声で返事をする。すると、出は少し顔を険しくしながら「秋文。」と強い口調で呼んだ。
「千春を信じてやれ。あいつは強いよ。」
「…………あいつは、絶対に泣く。………あいつの泣き顔を見るのも、見れないのも、俺は嫌なんだよ。」
そういうと、少し遠くの店内を歩く千春を、秋文は少し切ない表情で微笑みながら見つめた。