強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
「ほら、家に着いたぞ。」
「んー……眠たい。」
「おい、靴脱げ。」
「秋文、取ってよー。お願いー。」
「……はぁー……。」
千春は酔うと、秋文にも甘えてくる。
普段は、立夏や出には甘えることはあるが、秋文にはほとんどなかった。
秋文自身も、誰かに優しくする事が苦手だったし、照れが勝ってしまう。特に千春はダメだった。本当に言いたい事が言えずにケンカ口調になってしまうのだ。
好きな子にいじめてしまうガキと同じだなと、自分でもわかっていた。
千春の履いていたパンプスを脱がせる。
千春の肩と抱えながら、部屋の奥まで行き、ベットまで寝かせた。
部屋は、綺麗にしてあるがテレビの前やベットには漫画本やゲームが散乱していた。元彼氏と会った後は、我慢していたものを発散するようにゲームに没頭していたんだろうな、と秋文は考えた。
春になったとはいえ、まだ夜になると肌寒い。
千春をベットに寝かせた後に、しっかりと体に、布団を掛ける。すると、体が暖まり気持ちよくなったのか、安心しきった表情になった。
「千春。俺、帰るからな。鍵、今度会った時に帰すからな。」
「………ぃ、帰らないで……。」
「え?」
寝ぼけているのだろうか。千春は、ゆっくりと体を起こして、何かを言っていた。
秋文は驚いて、千春の元に戻った。「どうした?気持ち悪いのか?」と、千春の顔を覗き込もうとした瞬間。
秋文は、千春に抱き締められていた。
「おまえ、何………。」
「先輩、いかないで。私、寂しいよ……。」
「………。」
千春は泣きそうな声で、秋文を先輩と呼んだ。
秋文を先輩だと勘違いしているのがわかると、秋文は一気に切ない気持ちに襲われた。
俺は何をしている?好きな女に、元彼氏の男だと間違えられ、抱きつかれている。そんな逃げ出したい状況なのに、秋文はそのまま動かなかった。
千春は、相当なショックを受けているのがわかったのだ。抱き締められ、首元には彼女が流した涙が落ちている。