強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました



 「俺は帰るから。鍵は……秋文に渡しておく。」
 「秋文………。」
 「……千春、俺は…….。」
 「寂しいから帰らないで。」
 「………千春。」


 我慢していた思いが、出てしまう。お酒を飲んで素直になるなんて、最悪だ。そんな風に思いながらも、涙が出てしまう。 
 体と目蓋が重い。秋文の顔が見たいのに、見れない。けれど、手が、優しく包まれ少しだけ冷たいけれど安心する熱を感じた。


 「大丈夫だ。ここにいるさ。」
 「うん……ありがとう。秋文……。」


 そんな言葉だけで安心する。
 千春にとって秋文が、とても大きな存在になっているのが自分でもわかっていた。


 我が儘をいってごめんなさい。

 その言葉を彼に伝えられたのか、千春はわからないままに夢の中に深く入ってしまった。








 ★☆★





 相手先との食事会がようやく終わり、まだ解散していなければ四季組に合流しようと思っていた。けれども、もう夜も深い時間だ。明日が休みだからと言って、明日も試合がある出を拘束することはないだろうと思っていた。
 連絡を取ろうとスマホを開いた瞬間に、電話が入った。千春からだと思ったが、出からだった。



 「悪い、飲み会間に合わなかった。もう解散してるのか?」
 『もう終わったよ。それより、秋文。………まだ、千春に話してないのか?』
 「……まだ言ってない。」
 『千春は、何か違うことをしてるってうすうす感じ始めてるぞ。それに、あの事は……。』
 「それは、わかってるさ。」


 電話越しの出は、始めから少し怖い雰囲気があった。出は滅多に怒らないが、怒るととても怖いことを秋文は知っている。
 その出がそんな声を出すぐらいの事を、自分はしているのだわかる。そんなことは自分でもわかってきたはずだった。
 それでも、彼女に黙っていたのは心配を掛けたくないから、失敗したときにカッコ悪いから。
 そんな下らない理由だった。

 けれども、千春なら待っていてくれる。そして、話したときに喜んでくれる。そう勝手に思い込んでいたのだ。
 それが千春には、負担になっているとわかりながら。


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