強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛彼氏になりました
『千春の鍵を預かってる。今、会えるか?』
「あぁ。すぐ行く。」
秋文と出は待ち合わせの場所を決めて、電話を切った。秋文は、大きくため息をついた後に、スーツに合うように綺麗にセットした髪を、乱暴にかきながら車を走らせた。
真夜中と言ってもいい時間だったので、秋文と出は、秋文の車の中で話をした。
出は助手席に座ると、すぐに秋文を見つめて話しを始めた。その瞳には強い意思があり、これから責められるとわかった秋文は、げんなりとした顔をしてしまった。
「いつもみたいに立夏と一緒に酔っ払ってしまったから、千春の自宅まで送った。」
「悪かったな。」
「…………千春がそんなになるまで飲むのは不安な事や悲しかった事がある時だって、秋文はわかってるな?」
「わかってる。……あいつの事はよくわかってる。」
まっすぐに秋文を見る出とは視線を合わせないように、ハンドルに腕をついて前を向いたまま返事をする。
出に言われなくてもわかっている。自分が悪いという事ぐらいは。
「千春は、おまえが何も言ってくれないと、泣いていたぞ。」
「なっ………。」
「俺には泣き顔を見せてくれた。今回の事で、おまえには泣いたりしたのか?」
「…………。」
千春は出を兄のように慕って甘えていたのは知っていた。自分は冗談を言ったり、言い合いをするぐらいなのに、出には相談をしたり、抱きついたりしていた。そんな関係を見て、昔から嫉妬をしたり、千春が好きなのは出なんじゃないかと思った事もあった。
けれども、付き合い始めてからは自分が1番の相談役であり、甘えられる特権だと思っていた。
それなのに、千春はまだ出に先に相談して、甘えているのだろうか。
そう思うと悲しくもあり、嫉妬で怒りさえ感じてしまう。
どうして、千春は俺に言ってくれなかったのか。
待ってくれないのだろうか。
「千春がどうして秋文じゃなくて、俺や立夏に、相談したか。理由がわからないわけじゃないだろ?」
「………俺は………。」
何も言えなくなってしまった秋文を見つめ、出は小さくため息をついた。